奇跡の脳~脳科学者の脳が壊れたとき/Jill Bolte Taylor
統合失調症の兄を持った「わたし」は、小さい頃から脳に興味を抱く。同じものを見て、どうしておにいちゃんとわたしは反応が違うの?努力の末に脳科学の専門家となり、ハーバードの第一線で活躍するわたしは、誰よりも脳について知っているはず、だった―。
1996年のある日、37歳で脳卒中に襲われ、生活は一変する。左脳の機能が崩壊し、言葉や身体感覚だけでなく、世界の受け止め方までも変わったのだ。体力の補強、言語機能を脅かす手術、8年間に及んだリハビリ。そこでわたしが得たものとは、何だったのか。脳卒中になりうるすべての人に―。
右脳優位という言葉は所々で使われるが、実際に右脳しか使われなくなった場合は果たしてどうなるのだろうか。
ジル・テイラー女史の著書「奇跡の脳」では、実際の体験談が書かれている。
まずは右脳だけでは字を読むことができない。文字も数字もただの形にしか見えなくなるのだ。
何とか文字を理解してもそこから連想する事ができない。社会生活を送る事など不可能である。
この社会生活というのがミソで、人間の社会生活というのは完全な左脳主義である。
それ故に人類は万物の霊長として根を拡げてきたわけであるが、右脳をおろそかにすると大切な事を忘れてしまうのでは無いだろうか。
と言うのも、ジル・テイラー女史は脳卒中で左脳が麻痺した際に、右脳の世界に居たのだが、痛みと恐怖の中で不思議とそこで幸福感を感じたのである。
自分の体が流体になり、境界線が無くなり全てが一つになるような体験だ。
これは紛れも無く瞑想上級者が感じる世界である。
[出典:http://spimemo.blog112.fc2.com/blog-entry-20.html]
目次
はじめに:心と心、脳と脳
1章:脳卒中になる前の人生
2章:脳卒中の朝
3章:助けを求めて
4章:静寂への回帰
5章:骨まで晒して
6章:神経科の集中治療室
7章:二日目 あの朝の後で
8章:GGが街にやってくる
9章:治療と手術の準備
10章:いよいよ手術へ
11章:最も必要だったこと
12章:回復への道しるべ
13章:脳卒中になって、ひらめいたこと
14章:わたしの右脳と左脳
15章:自分で手綱を握る
16章:細胞とさまざまな拡がりをもった回路
17章:深い心の安らぎを見つける
18章:心の庭をたがやす
回復のためのオススメ
附録A:病状評価のための一〇の質問
附録B:最も必要だった四〇のこと
脳についての解説
訳者あとがき ことばを失った科学者の本
解説:養老孟司
解説:茂木健一郎