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論理療法の理論と実際/國分康孝【ガイド・目次】

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論理療法(rational therapy)とは

アルバート・エリス(Albert Ellis)が1955年に提唱した心理療法で、心理的問題や生理的反応は、出来事や刺激そのものではなく、それをどのように受け取ったかという認知を媒介として生じるとして、論理的(rational、あるいは合理的)な思考が心理に影響を及ぼすことを重視している。1990年代より名称が変わり、邦訳では理性感情行動療法Rational emotive behavior therapy ; REBT)などと呼ばれるが、当初の論理療法と呼んでも間違いではない
後にアーロン・ベックが、認知療法(Cognitive therapy)を提唱するが、論理療法はそうした認知に焦点を当てる認知行動療法の最初のものである

理論としては、出来事(A)、ビリーフ(Belief、信念)、結果(C)のビリーフ(B)のうち、非合理的なイラショナル・ビリーフを論駁するという、ABC理論を特徴とする。

[出典:Wikipedia]

人間の信念(Belief)にはイラショナル・ビリーフとラショナル・ビリーフの2つがある。
ラショナル・ビリーフは「できれば~であるほうがよい」といった柔軟な考え方。
イラショナル・ビリーフは「~でなければならない」といった固定観念に縛られた思い込みのこと。

1.レッテル貼り:根拠がないのに真実だと決めつける
2.白黒思考・all or nothing:物事を0か100か、白か黒かでしか判断しない
3.心の読み過ぎ・先読みの誤り:自分の視点からしか物事を考えられない
4.心のフィルター:賛成意見には注目し、反対意見は無視する
5.べき思考:~すべきだと決めつけて考える
6.過剰な一般化:一部のことを全てだと思い込む
7.個人化・責任転嫁の逆:周りの悪い出来事は全て自分のせいだと思う
8.感情的決めつけ:その時の感情で物事を判断する
9.マイナス化思考:失敗を予想し、その通りになっていく
_など。「自動思考」「歪んだ認知」とも呼ばれる。
これらのネガティブ感情や思考は自分だけでなく周りの人も不幸にする。

ABC理論

ABC理論または、ABCDE理論とも呼ばれる理論ですが、それぞれ下記のような意味を持ちます。

A:Activating event(出来事や体験)
B:Belief(信念、受け取り方や感じ方)
C:Consequence(結果⇒感情・悩み・行動)
D:Dispute(反論・説得)
E:Effect(結果⇒Cと異なる感情、行動へ)

イラショナルビリーフとは、この「B」が非合理的な信念であった場合に起こり得るものになります。
わかりやすくいうと、次のような思考です。

A⇒仕事でミスをした
B⇒ミスをするなんて社会人失格だ
C⇒もう会社に行けない、辞めたい

「ミスをするなんて社会人失格だ(失敗をしてはいけない)」という信念・思い込みにより「もう会社に行けない、辞めたい」という極端な結果を招いています。

その結果に対して、「ミスひとつで社会人失格なんて大げさではないか?」「その考え方に論理性はあるか?」と働きかけるのがDの反論・説得です。
それを受けて、Eの新しい結果・感情が生まれてきます。

A⇒仕事でミスをした
B⇒ミスをするなんて社会人失格だ
C⇒もう会社に行けない、辞めたい
D⇒だがまったくミスをしない人間がいるのか?
(B⇒そうだ、まったくミスをしない人間はいない)
E⇒同じミスを繰り返さないように気を付けよう

[出典:https://news.doctor-trust.co.jp/?p=33446]


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目次

★第I部:原理編

第1章:論理療法の意義と特質(國分康孝)

論理療法とはどんなものか

論理療法とはアルバート・エリス(Albert Ellis, 1913-2007)によって、1955年頃から提唱され始めた心理療法であるが、1998年現在は論理療法的カウンセリングということばも用いられるようになり、心理療法界とカウンセリング界の双方で脚光をあびている。今のアメリカで学術論文に引用される頻度数の高いトップの三人が、カール・ロジャーズ、エリス、ジークムント・フロイトである。それほどにエリスの論理療法は世界的に知られている。

その骨子を簡単にいうと次のようになる。
人間の悩みは出来事や状況(例:友人がいない、昇進しない)に由来するのではなく、そういう出来事をどう受け取るかという受け取り方に左右されると考える。この受け取り方のことをビリーフという。たとえば、「家庭は憩いの港である」というビリーフをもっているから、帰宅しても電灯がついていなかったり、食事が出来ていないと不愉快になるのである。もし「家庭は第二の職場である」というビリーフをもっていれば、さほど不快にならない。これが論理療法の第一の主張である。
しかし、ビリーフ(考え方)さえ変えれば、悩みはすべて解けると断言はしない。悩みが軽減する程度のこともある。上司からの評価が低い社員が「上司ににらまれたら世も末である」というビリーフのため落ちこんでいるとする。このとき「上司ににらまれたからといって首になるわけではない。あと五年辛抱すれば、上司は転勤していなくなる」と考えれば気が楽になる。しかしもっとよい方法は、上司に好かれるようになることである。

つまり、出来事(状況)を変えることである。どうすれば、上司が私を好いてくれるようになるだろうか。たとえば、「ホーレンソウ」(報告、連絡、相談)をよくする、敬語を使う、ときたまお世辞も言う、遅刻しないなどの方法を工夫することである。そういうわけで、論理療法は考え方(ビリーフ)を変えるだけでなく状況を変えることも提唱している。つまり、ソーシャル・スキル訓練や自己主張訓練も用いるのである。以上の論点を簡単にまとめるとABC理論となる。ABCの意味は次の通りである。

A:Activating event (出来事)
B:Belief (ビリーフ、固定観念)
C:Consequence(結果、悩み)

常識では、A(例:失業)はC(例:おちこみ)の原因であると考えるが、論理療法ではAはCの原因ではなく、B(例:世の中はうまくいかないにちがいない)がCの原因であると考える。それゆえ、人生の幸、不幸はBで決まると考えるのである。苦境(A)にあっても、B次第で自殺するかしないかが決まるというのである。

だだし、Aといっても如何ともしがたいA(例:死)と、人為的に変化させられるA(例:火事)とがある。Aを変えるのを無精してBだけを心の中で変えて事をすませようとすると、それは言い訳、こじつけになる。Bを変えたあと、Aが変えられるものならAを変えるように工夫をすることである。

論理療法のツボは、①Bの修正、②Aの変容のほかに、もうひとつある。③Aの認識そのものの修正である。
たとえば、「みんなが僕を嘲笑した」というのは客感的出来事(A)のように見えるが「30人のクラスメート全員のことか?」と聞くと「3人だ」という。「嘲笑したのか?」と聞くと「嘲笑したように思ったけど」という。Aがあやふやなときはこれを明確にさせるだけで、Cが変わるということもある。

論理療法が注目されている理由

論理療法は、*ロジャーズの来談者中心療法とちがって能動的である。
この両者は認知(受け取り方)の変容をねらいとしているところは共通である。

ロジャーズは、自分への受け取り方(自己概念)を変えるのがねらいである。
論理療法は、自分、他者、人生一般への受け取り方(ビリーフ)を修正するのがねらいである。

ねらいは共通しているが、アプローチがちがう。
論理療法は、ロジャーズ風に感情の世界にゆっくり耳を傾けない。その感情を生み出している思考に耳を傾ける。しかも傾聴するだけでなく、その思考を論駁して他の考え方(ビリーフ)に修正するように説得する。

*来談者中心療法・カウンセリング
来談者中心療法(クライエント中心療法)は、1940年代に米国の臨床心理学者カール・ロジャースが創始。日本では1940年代より導入。当初は「非指示的療法」、近年では「パーソンセンタード・アプローチ」とも呼ばれる。
「来談者の話をよく傾聴し、来談者自身がどのように感じ、どのように生きつつあるかに真剣に取り組んでいきさえすれば、別にカウンセラーの賢明さや知識を振り回したり、押しつけたりしなくても、来談者自らが気づき、成長していくことができる」というのが基本的な考え方。
人間は、成長・自律・独立等に向かう「実現傾向」を持つと考える。カウンセラーは、自らの体験・意識・表現が一致していること、来談者に無条件の肯定的な関心を持つこと、共感的に理解することを重要視する。
[出典:日本臨床心理士会]

論理療法の学問的背景
論理療法を使う人の条件
論理療法のキーワード

第2章:イラショナル・ビリーフの特徴(國分久子)

イラショナル・ビリーフ

四種類のイラショナル・ビリーフ

1.ねばならぬビリーフ〜でなければならない、〜なはずだ、という思い込み
事実と願望の識別がなく、心の中に、いつでも、どこでも、自分の願望通りにならねばならないという文章記述があるということ。

2.悲観的ビリーフ~全部うまく行かない、世界は終わりだ、という思い込み
「世も末である」「救いがない」「お先真っ暗」「ろくなことがない」「絶望的」といったことばを含む文章記述。
一般化のしすぎに由来している。

3.非難・卑下的ビリーフ~自分、もしくは、相手はダメなやつだ、という思い込み
なぜ自他を非難するのかというと、他社からの攻撃を防ぎたい、責任を回避したい、罪障感を解消したいという動機があるから。

4.欲求不満低耐性ビリーフ~我慢ができない、耐えられない、という思い込み

第3章:論理療法と認知療法(長谷川啓三)

エリスとベック
「歌うことで認知を変える」
「行動」から認知を変える
実存哲学としての論理療法/ひとは本当に愛なしでは生きていけないか

第4章:論理療法の適用範囲(橋口英俊)

ビリーフが直接かかわる心因性の問題
ビリーフ以外の要因が強い場合
事例

第5章:少しゆっくりの論理療法/カウンセリングにおける三種類の人間関係モデルから(石隈利紀)

カウンセリングにおける三種類の人間関係
論理療法のプロセス
考察

★第Ⅱ部:研究編

第6章:ボランティア日本語教師のビリーフ(林伸一)

第7章:学級担任のビリーフ(河村茂雄)

「教師特有のビリーフ」とは
教師特有の十のビリーフと児童生徒の学校生活への意欲や満足感
教師特有の十のビリーフと教師の行動や態度との関係
おわりに

第8章:ビリーフ・システムと中国人留学生の異文化適応

はじめに
異文化適応とは
ビリーフ・システムと中国人異文化適応との関連
中国人留学生のイラショナル・ビリーフ
自己に関するイラショナル・ビリーフと適応との関連
他者・状況に関するイラショナル・ビリーフと適応との関連
倫理観に関するイラショナル・ビリーフと適応との関連
イラショナル・ビリーフの異文化体験における変化
まとめに代えて

第9章:無気力から自分らしさへ(半田一郎)

無気力とは
イラショナル・ビリーフと無気力の関係
ビリーフと喜びの感情
自分らしく生きるには
おわりに

第10章:犯罪を繰り返す人びと(累犯者)のイラショナル・ビリーフ(押切久遠)

はじめに
累犯者のイラショナル・ビリーフとは何か
累犯者の持ちやすいイラショナル・ビリーフ
イラショナル・ビリーフを扱うことの実践的意味
おわりに

第11章:思春期・青年期のビリーフ/発達にそった論理療法的関わりを考える(鈴木未央)

はじめに
自己に関するビリーフ
ビリーフと適応の関係/何が「イラショナル」なのか
ビリーフと自我発達/メタビリーフを育てる
関わりを考える
事例
おわりに

★第Ⅲ部:実践編

第12章:論理療法を生かしたエンカウンター・エクササイズ

論理療法の理念と技法
論理療法をヒントにしたエクササイズ

第13章:論理療法を生かした学生相談(鈴木由美)

事例1 問いかけによる論駁
事例2 論理療法的自己分析による論駁
事例3 データ提示法による論駁
考察

第14章:論理療法を生かした教育相談/高等学校での実践(吉田隆江)

自己体験を通して
事例1「みんなから好かれたい」
事例2「一人では何もできない私、だからみんなと同じでなければならない」
事例3「国語の学力があがらないから大学に入れない」
事例4「国語の授業で論理的思考試練」
おわりに

第15章:論理療法と小学校教育(朝日朋子)

事例1「みんなが私を仲間外れにする」と訴える三年生のA子の場合
事例2人間関係に悩む友人教師の例
事例3「先生はうちの子ばかり注意する」と訴える母親の場合

第16章:ビリーフ修正のサイコエジュケーション(橋口英俊・宮本温子)

サイコエジュケーションの一つとしての講義法
事例

第17章:論理療法を生かした治療的面接(横口英俊)

事例
初回面接 来室までの経過
筆者の見立てと対応
経過 考察

第18章:矯正カウンセリングに生かす論理療法(竹越進二)

はじめに
少年院とはどのようなところか
矯正教育と論理療法の接点
矯正教育におけるREBTの方法と実際
おわりに

第19章:論理療法と吃音(伊藤伸二)

はじめに
論理験法と吃音
吃音者の陥りやすい非論理思考
二人の体験
おわりに、

第20章:自己説得と論理療法(小森英明)

はじめに
自己説得例その1/練習あるのみ!
自己説得例その2/人格不問?
結語

付録 論理療法関係の文献例
あとがき

 


 

 

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