無能唱元

【無能唱元・伝法講義録 004】マイナス情報に接した時

更新日:

人の心を暗くする話題を、「マイナス情報」と呼んでおります。

このようなマイナス情報を、人からもたらされた時、それに対し、どのように対処すべきなのでしょうか?ここで、幾つかの事例をあげて説明して行ってみましょう。

R子さんは26歳のOLです。彼女は私に次のように訊いたことがあります。

「私は結婚したいのですが、なぜか男の人たちは私から離れてしまうのです。なぜでしょうか?」

実は、私はR子さんへのその答えを、ある日の彼女の言動から得ているのです。

何人かの人々が集って雑談をしていた時です。一人の男性が、「今日、ここへ来る時、ひどい交通事故を見ましてね」と話し始めたのです。「バイクが僕の目の前ではねられましてね、いやもうそれはひどい血で……」といった時、R子さんは「ストップ!」と叫んで、右手の人差指を立てて左右に振ったのです。

「それは無しにしましょう。マイナスの気分の話は……」と、きっぱりといいました。そこで、この男性はおとなしく沈黙したのです。この時、私は「これだな!」と感じました。R子さんの問題の原因は……

さて、私たちが、自分の心を暗くするようなマイナス情報に接した時、その影響を逃れるための方策は、次の三つのやり方が考えられるのです。

①その情報源をストップさせる。
②その情報源から遠ざかる。
③その情報を心の中で解消する。

①は、自分の外界そのものを自分の気に入るように変形させようと計る行為です。そしてそれは「物質界における配慮」といえます。
②は「遠離法」として、その運用をある程度推奨している方法です。
③は「離心法」。

②は厭な情報から逃げ出してしまうのに対し、この③は、その厭な情報を一旦心の中に取り入れながらも、そこにおいてそれを無害化してしまう方法です。いわば、これは自分の心の操作であり、管理のやり方であります。①が「物質界における配慮」であるならば、この③は「精神界における配慮」と申せましょう。そして②はその二者の中間にあるものです。

さて、R子さんは、厭な情報を聞かないようにするために、その情報源にストップをかけました。すなわち、①の方法を用いて、外界を変化させようとしたわけです。

この時、R子さんは、このような暗い話はその場の全員の心を不快にするという判断をしたのであり、そして、彼女の心には「正しさを行っている」という微かな自負の念もあったでありましょう。

ところが、世の中には、事故や病気や、人の不幸の話が大好きという人々も大勢いるのです。テレビや映画で、残酷ものシリーズがヒットした例はそれを証明しています。

それが良いか悪いかは、ここでは別として考えてみますと、彼女は自分の判断だけを絶対とし、その場の他の人々の気持ちに対しては考慮を払わなかったことになります。

そして、R子さんはここで他の人々にそれがたとえ僅かなものであったにしろ、不快感を与えたことになります。

「なぜ、男の人は私から去って行ってしまうのでしょうか?」と尋ねたR子さんの答えは正にこの点にあります。

彼女は、外界を自分の思ったように性急に変えようとし、そして周囲の反感を買ってしまったのです。

Y夫人のこと

Y夫人は五十年配の、常に魅力ある笑顔を浮べて人の心をそらさない、非常に若々しい感じの女性です。経済的にも豊かであり、しかもその財産は自分の才覚をもって築かれたもので、一口にいって優秀な能力を持った人です。

さて、このY夫人が、当会の教義の普及に一役を買ってくれ、何かと援助してくださることになりました。ところで、かねてから、私は夫人に対して、一つの興味ある疑問を抱いておったのです。

それは、あの明朗きわまりない態度、人に対した時、常に相手に好感を与えるあの笑顔、それは疑いもなく、彼女に物質的恩恵をもたらした一大要因でありましょうが、その明るさについての疑問でした。

すなわち、マイナス情報に接した時、彼女はどのような態度をとるのでしょうか?
①外界を直そうとするのか?
②そこから逃げ出すのか?
③自分の心の中で処理してしまうのか?
これらの内、主としてどの方法によって、あの魅力的な笑顔を保持し得たのでありましょうか?

そこで私は、二度にわたって、彼女との会話中、実に否定的な話をしてみたのです。それは未来への恐れであり、過去への愚痴でした。協力者への不平不満と攻撃、気落ちのするようなデー夕、数字について、くだくだとくり返し話したのです。特に、二回目は一室に二人だけで対座して、じっくりと、暗い話題を提供してみたのです。

すると、まず、夫人の眉根が微かにしかめられ始めました。そして、息を吸って何かに堪えているようにも見えました。そして、急に、「ガスストーブが熱くありませんか?」とか「部屋の空気がにごっていませんか?」と話を遮るようになり、遂には、「過去のことはもう、くだくだいっても仕様がありませんから、未来のことをどうしたらいいかということについて考えましょうよ」といって、突然立ち上ると部屋を出て行ってしまったのです。

ここで明白になったのは、Y夫人の魅力的な笑顔が保持されたのは、
①の外界を直す(過去の暗い話は止めましょうという態度)と
②の遠離法(突然その場から逃れる〉という二つの方法によってなされて来たという点です。すなわち、それは、③の離心法によるところは少なかったものと推察されるのです。

さて、私はなぜこのような、見方によっては少々意地悪いテストをしてみたのでしょうか?それは、当会において、その中心的活動をする場合、「離心法」というものが大きく要求されるからなのです。

例えば、私は個人面談として、一日に二人から三人の人に面接し、人々の話を聞きますが、この仕事の性質上、その話の内容は圧倒的にマイナス情報であることが多いのです。

これらの人に対する時、まず要求されることは相手の話にじっくりと耳を傾けるということです。当然のことながら、マイナス情報は、暗い陰湿な情念を私の心中にかもし出し、私は息苦しくなり、しかも、その否定的な気分は私の潜在意識に不利な影響を及ぼそうとします。

しかし、この時に、その相談を承る者として、私は相手の話を遮る(①のケース)ことも出来ず、その場から逃げ出す(②のケース〉も出来ないのです。ここで、相手の悩みについて真剣に考慮しつつも、自分の心身を守るための離心法というものを是非とも行なわねばならぬということになります。

つまり、当会の中心的活動をする際には、多くの一般会員に接し、親しく言葉を交すものとして、この離心法には、是非共熟達している必要があるのです。

Y夫人の魅力ある笑顔、人に好感を与える明るさは、しかし、①と②の併用によって保持されたものでした。さりながら、この方法は物質界をじかに動かす手段としては、なかなかに有効なものであり、この故に、夫人は物質的成功をかち得たものと思われるのです。

だがしかし、これを精神界における態度とした時、それは大きく失敗する可能性があるといわなければなりません。すなわち、①②に代えて、③の離心法をどうしても学ばなければならないのです。

離心の法を日常一心に修業しておりますと、人と話していても、その時、相手から発せられるマイナス情報を受けつけなくなるものです。つまり、心に一種の耐性が出来、その結果、相手の陰性さによってダメージをこうむらなくなれるのです。

心にこの耐性が得られれば、いかなる否定的想念の持ち主と相対していても、その否定的な影響はこうむらなくなります。相手が不平不満愚痴など、あらゆるマイナス材料をもって、そのカタルシス(排泄)作用を行なおうとも、その話の内容には真剣に耳を傾けつつも、その話にともなったマイナス情念の方は、自分の心の入口で跳ね返してしまうことが出来るのです。

このようにして、離心の法に熟達した人のみが、他の悩める人の相談に乗ってあげることが出来る、つまり、危険性がなく相手の悩みを聞いてあげることが出来るのだといえましょう。

これはいうなれば、離心法をもって自らをまず解放し、ついで、その解放心をもって、世人の心をも解放しようと努めるということを意味します。

仏教では、この心の解放を指して「解脱(げだつ)」と呼ぶこともあります。この解脱は普通「悟り体験」から得られるといわれ、またその故に、神妙不可思議なるこの体験はめったに得られぬものである、という人もいるのですが、離心法を行なえば、誰にも得られる一種の「心の眺望」に過ぎないのです。

[出典:唯心円成会伝法講義]

スポンサードリンク

スポンサードリンク

-無能唱元
-

Copyright© 青樹謙慈|アオキケンヂ , 2021 All Rights Reserved.