無能唱元

【無能唱元・伝法講義録 022】意識下に潜む多重人格性

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六つの元型(アーキタイプ:archetype)

ユングは、人間の意識下にひそむ、自己人格性を六つの形に分類し、これを「六つの元型(アーキタイプ)」と呼びました。

①シャドウ(影)
人は誰でもあらゆる可能性をもって生まれてくるが、その人の素質や遺伝的要因、環境、さまざまなめぐりあわせによって、その1部だけを発達させる。そこで、いろいろなタイプの人があらわれ、それぞれ違う。パーソナリティを発展させる。後に残された未発達の可能性は、無意識の中に住んで、どこか暗く、未熟で、幼稚なもうひとつの人格を形成する。それがシャドウ、すなわち、ふだんは自分でも気がつかない影のような存在だ。

②ぺルソナ(仮面)
ペルソナは、人が現実の社会に対して見せている顔であって、たてまえのようなものだ。多勢の人の前では、誰でも外向きの顔を作って、あまり自分が傷つかないように、その裏にかくれたり、自分をさらけだしすぎて恥ずかしい思いをしたりしないように、ある程度、仮面をつける。その仮面がペルソナだ。

③アニマ(女性原理)
アニマは、男性が無意識の中に秘めている未発達な女性原理で、情緒性やムード、恋愛感情などを司どっている。男性は心の中に、この女ただ一人という、魂のような女性のイメージをもっている。そして試験勉強や緊張を要する仕事の後などで、ほっとした時にこのムードがあらわれて、やたらに女性が恋しくなったり、甘く、ふんわりした情緒性にひたりたくなったりする。

④アニムス(男性原理)
アニマが男性の魂なら、アニムスは女性の精神のようなもので、やはり女性の無怠識の中にひそんでいる未熟な男性原理だ。アニムスは、女性にとって、力であり、言葉であり、行為であり、ものごとに意味をもたらすものであって、女性がしっかりとものごとがわかる完成した女になるためには、アニ厶スのイメージを成長させなければならない。

⑤グレー卜・マザー(太母/たいぼ)
グレー卜・マザーは、あらゆるものを育てる偉大な母なるもののイメージで、女性の成長の究極的な目標だ。しかし、多くの女性は、このイメージの存在を知らず、グレー卜・マザーの力を自覚していないために、この偉大な力は、勝手に本能的な行動をして、ものを育てるだけでなく、呑み込んでしまうこともある。
過保護の母というのは子どもを本能的に抱きしめて、しめ殺してしまうこともある未熟な母親のことで、自分でも知らずにグレー卜・マザーの力にふりまわされている。
男性にとっては、現実の母親から独立するだけでなく、この自分自身の心の中にあるグレー卜・マザーのイメ—ジからの独立計らなければならない。

⑥オールド・ワイズマン(老賢人)
老賢人は、女性のグレー卜・マザーと同様に、男性の成長の最終到達点だ。男性の理想像で、現実の社会的な権威をはるかに越える仙人のようなイメ—ジといえる。
仙人はしばしば童子に姿を変えてあらわれるが、つまり、老賢人は永遠の少年でもあり、若さ、永遠の生命、力、理性などを完全にもち合わせ、人間のあらゆる可能性を自分のものとした完成した人間、天の慧知に輝く父なるものだ。

[出典:「夢の本」別冊宝島15/ジック出版局刊]

このユングの六つの元型について、少々解説を加えてみましょう。
①の影(シャドウ)で思い出されるのは、「ジキルとハイド博士」という古典的小説です。いわゆる二重人格といわれるものですが、私たちは、表面的な自分の性格の他に、無意識の層に、さまざまな自分でも気がつかない他の性質面があり、その欲望は現実では表現されないため、夢の中で表現されることがあります。

例えば、日常は、小心で実直な男性が、戦国時代の獰猛な征服欲、殺人欲を無意識下に抑圧しており、それが夢で、血を流すシーンを、しばしば見るということにつながることがあるのです。

②の仮面(ペルソナ)は、ーロにいえば「体面」を保つための意識で、自己重要感と大きな関係があります。
夢の中では、しばしば、それは身につけ、身を保護したり、身を飾ったりするもので象徴されます。若い女性が、パンティー枚の素裸になり、自転車に乗って、田舎のあぜ道を疾走しているという夢の話を聞いたことがあります。

これは、まず、衣服という身を守る鎧を失くし、心細さの中にあることを示しております。自転車は行動を表し、しかも、どこかへ行って、何とかしなければならぬ、という焦りも感じられます。田舎のあぜ道は、逃避を意味し、脱都会、つまり、人間達の居ない場所を求めているのです。

この夢の前に、彼女は、自分の靴がバラバラにこわれてしまった夢を見ておりますが、これは、この場合、自己の立場を守る、それが靴なのですが、それを失ったことを意味し、生存本能上の危機感を覚えていたのでした。

これは、数日前、会社で上司に突然叱られたことに起因していることが、話を聞いている内に私には解りました。そして、その理由が解った時、彼女も、あの程度のことは恐れるに足りないことだと気がつき、安心を得たのです。

③と④は、要するに、異性的気質が、男性にも女性にも存在するということです。これは例えば男性にも女性ホルモンがあって、これが不足すると若はげになるという生理面のことを考えても納得できましよう。
それは、自己の理想的な異性のタイプなのですが、またそれは、自己の分身でもあり、自分の欲求による創造物でもあります。
アニマが女性で男性の中にあり、アニムスが男性で女性の中にある訳です。

⑤の太母と、⑥の老賢人は、要するに、母親と父親のイメ—ジの巨大化したものといえましよう。
ただし、この二者共に、陰陽の二面性を具備しており、例えば、太母は慈悲深い大地の様相を示す一面、鬼子母神に見るような盲目的偏愛に狂うような場合もあります。また、老賢人は秀れた叡智を示す反面、ノアの箱船に見るような天罰を与える場台もあり得るのです。
[出典:唯心円成会伝法講義]

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