無能唱元

【無能唱元・伝法講義録 027】正しさを主張する時

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正しさを主張する時は

豊臣家の関白秀次は、秀吉に対し、自分が次期の日本国国王の正統な継承者であることを主張しそれを秀吉の子、秀頼にゆずろうとしなかったため、遂に身を滅ぼしました。
これは、秀吉の力と自分の力との評価が正確に出来なかったせいです。
しかし、この秀頼も、徳川家康に対し、秀次と同じ愚行を行なっているのであります。
すなわち、政権を、自らの力がないにもかかわらず、自己の正統性を主張しつづけて、遂には、すべてを失ってしまったのです。

この時、両者とも、一歩退いて、一大名の地位に甘んじたならば、おそらくは、その身と家を安泰に導くことが出来たのではないでしょうか?
その器でない者(すなわち、その力がない)が、身の力に過ぎた要求、主張をかかげた時、常にその身に危険が及ぶ、というこの自然の摂理を決して無視してはなりません。

そこで、現実生活の上において、次のことをぜひ実践して頂きたいと思います。

それは「正しさを主張する時は、相手と自分の力を計りにかけよ」ということです。

相手の力が60%であり、自分の力が40%であるならば、しつこく自己主張することは危険です。この場合は、主張は10%ぶんだけ手控えた方が安全なのです。
相手が、今、自分が得ている利益について「生殺与奪の権」を握っている時、それに対して、自己の正義を主張することは、いわば自殺行為に等しいものです。

こんな時、あくまでも、その正義を貫きたかったら、その利益は最初から放棄する覚悟をした後に、その主張をするべきなのは、正に自明の理です。しかるに、世の多くの愚かな人は、その利益を失うことについて考慮せず、それを失った時に仰天狼狽し、そして、それを自分自身の言動の責任とせず、ただただ他人を恨むばかりとなるのです。

「自分自身の力を知れ」この言葉は非常に重大な意味を持っております。というのは、この力は、他者との関わりあいによって微妙に変化して行くからです。

変化する力関係

Aさんに対した時と、Bさんに対した時と、あなたの相手におよぼす力は、その力の量は全く変わって行くことが多いのです。ですから、自分自身の力を知れということは、その時、その場における自分と相手との力関係を知れ、ということにもなります。そして、この力関係の上に、あなたの正しさの主張の度合いは、注意深く変化して行かねばなりません。

そしてまた、時には、利益に対するあなたの取得分は制限されなければならないことも知らなければならないのです。
こうして、あなたはあなた自身の身を守ることが出来るようになります。すなわち、これが、「身守術」なのです

あらゆる成功法には、
①積極的思考による挑戦的意欲(陽)と
②冷静な観察眼による自己管理(陰)の二者をぜひとも必要とします。
しかし、この世には、しばしば、前者の①のみを重視して、②の「陰気を整える」を忘れている人々が実に多いのであります。

陰気整うべし

人々が各自の自己の欲望を、その抽象的概念より具体的行動へ移す際には、その目標設定関しての配慮が必要になってきます。

私たちは、生命の火を燃やすためには、まず欲深くあらねばなりません。
しかし、その欲の深さは、その時点、その境遇を考慮して、あまりにも非現実的な大きいもの、髙いものを目標設定して、そこを目がけて、一気に駆け上がろうとするような行為を意味するものではありません。

イカロスは、ロウで作った羽で、天空目がけて飛びつづけ、遂に、太陽熱で、そのロウが溶け、墜落してしまいました。
この神話は、教訓として、
「天空のような神聖な場所を侵してはならない」とか「人間あまり髙望みをしてはならない」などと世の人々は受け取っております。
しかし、私は、天空を目指すこと自身に誤りがあるとは考えないのです。だが、具体的にそれを達成するには、現在の自分の物質界における力量というものを考慮に入れなければならないと考えます。

簡単にいえば、目標物と自分との距離です。究極的な望み、それはしばしば理想と呼ばれるものですが、そこへ一気に駆け上がろうとすれば、無理が生じ、イカロスの羽のロウのように溶け、墜落してしまう。

ここで、考えられるアイデアは二つあります。

その一は、羽を改良すること。すなわち、道具を改良することすなわち、道具の改善です。
その二は、究極的理想の以前にもっと身近な目標を定めそこへまず到達してから、次の段階を考えることです。

宇宙ロケットは、地球帰還の際に、大気圏内に突入するとその空気との摩擦熱のためにロケットが燃えて溶けてしまう。それを防ぐために耐熱性の塗料や、タイルが外側に張りつけてあり、これでその熱を遮断できるそうですが、これなどは、その一の「道具の改善」にあたりましょう。
また、遠い宇宙の彼方へ旅をするには、中途にまず宇宙ステーシヨンを作って、そこを基地とする。
これはその二の「身近な目標設定」にあたりましよう。

今、ここに一本の棒磁石があると思ってください。
ご存知のように、棒磁石には両極があり、プラス(陽)とマイナス(陰)に分かれております。
この棒の中間には、陰陽の合体を許さない異和の原因でもあるのでしょうか?。とにかく、この両者のパワーは、この棒の内部でへだてられたため、その外部の空間で交わろうとするのです。
この時、陽極より出た陽のパワ—は、陰との結合を求めて、空間にその磁界を放出します。
一方、陰極は、一種の空間ともいえる磁場を作り、その中へ陽のパワー迎え入れようと待つのです。
この場合、陰極は、あたかも一個の容器のように思えます。陽気は、この容器の中の空白部の広さに応じて、そこに収められるのです。
これは、いい代えると、この棒磁石の磁力の大きさは、陰極の容器の大きさによって左右されるとも考えられるのです。例えば、陽気がいくら強く大きくても、受け入れ側の陰の容器が小さければ、そこに生ずる磁力すなわちパワーは大きくなり得ないのです。

棒磁石は、その棒自体が大きくなれば、その磁力はそれに比例して大きくなります。これは、その陽気の増大とともに、陰の容器の内容空間も拡大していることを示すものです。注意して頂きたいのは、この「陽と陰のバランス」です。自然界では、この釣り合いがよくとれており、その秩序のもとに運動が行なわれております。つまり、これは宇宙の法則の一つである「調和の原理」なのです。

陰の容器とは何を意味するのでしょうか。それはこの場合、あなたの肉体を指すものです。あなたの力、あなたの智力、あなたの能力を意味しているのであります。

ーリットルのビンを海に投げ入れても、ーリットルの水しか、その中に収めることは出来ません。
もっと多くのものを得るためにはビンを大きくする。すなわち、あなた自身が大きくならなければならないのです。
これは、いってみれば、「陰を整備するj ことです。私たちは、陽気を欲深く発動するとともに、この陰気をよく整えなくてはならないのであります。

ここでお勧めできる一つのテクニックがあります。それは「長期目標と短期目標の使い分け」です。

長期目標とは、いってみればそれは理想的なものです。それは、それで定めておき、そこへ達するための手段、または段階として、現在の自分の能力で考えてみて、手のとどく距離のところにあるものへ目標を定めるのです。これがすなわち短期目標です。

古い諺に曰く「千里の道も一歩から」という言葉がありますが、千里とは余りに遠く気が遠くなるような思いがするものなら、せめてまず、十里さきを、第一目標に設定すれば良いと思います。
そして、焦らず、休まず、一歩一歩足を進める。見つめるのは十里さきで良いのです。それから先きのことは、そこへ到達した時に考え初めれば済むことです。

ヒケツは、次のように要約されましょう。「まず欲を奮い起こし、同時に、自己を整えよ」と。

ーロに、陰の状態といっても、それは一様ではありません。
例えば、しなやかな身体つきの黒ヒョウが、ゆっくりゆっくり歩いていても、その四肢の筋肉には力がためられており、いつでも反射的に跳躍出来る瞬発力が秘められております。これは明らかに疲れ切った人間が、足をひきずるようにして歩いている場合とは異なるものです。

単に、静かに歩いているという陰の状態でも、このような違いがあるように、見た目には同じように見える陰の状態にも、好ましい場合とそうでない場合があるものです。

好ましい状態と好ましくない状態とは、例をあげれば、次のようなものです。
「知足」と「絶望」
あることを諦め、それに対しての欲望を捨てるに際しても、「足ることを知る」には、自己の心情をリラックスさせるセルフ・コントロールの努力があり「望みを絶つ」には、自己の心情に無念さを残した、すなわち緊張の状態のまま放置されたありさまがうかがえます。

「我慢」と「許容」
これも似て非なるものです。
誰れかが、あなたに何かひどい仕打ちをしたとします。そして、あなたがじっとそれに耐えたとすれば、それはあまり好ましい状態とはいえないのです。なぜなら、口惜しさ、恨みの念がそこにこもるわけで、これは心的要因となって、あなたを病気にさせたり、不運をかもし出すかも知れないからです。

これに反して、「相手を許してしまう」
その許し方は、その相手の仕打ちに対するものの考え方、解釈の方法によって、色々違いますが、ここにも必要とされるのは、セルフ・コントロールです。

ここまでお話しすれば、もうお解りでしょうが、要は、自分の心を自分でコントロールする、すなわち、自己支配を用いて、「陰気を整える」

このようにすることによって、陰かならずしも否定さるべきものではなくなってしまうのであります。
そして、このようにして、陰気を整えることこそ、前述した「陰の容器を拡大させる」具体的な方法なのです。

さあ、これで、大いなる陰の容器を得ました。あとは、盛んなる陽気を発して、それをこの容器に取り込むことです。

仏教では古来「小欲知足」を唱えてきました。しかし、私は声を大にして、皆さんにこうお勧めしたい。
知足大欲」と…。

そして、平安と健康の日々の中に、欲望の火を燃しつつ、カー杯生き生きと人生を過して行って欲しいと願うものであります。

[出典:唯心円成会伝法講義]

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