ああ主よ、ぼくはケーキを食べたかっただけなのです。
子供のころ、クリスマスはイエスさまの誕生日だと教わりました。
でも、ぼくにとっては一年に一度だけケーキを食べられる日でした。
ぼくの誕生日の日はご飯にちょっと色がつく日でした。
おかあさんは五目ご飯だと教えてくれました。具は油揚げだけだったけど。
一目も五目もぼくにとってはどっちでもいいのです。
ただひたすらケーキが食べたかったのです。
クリスマス(イブ)の日は、ぼくの誕生日よりうれしい日でした。
夕方クリスマスケーキが届くと、おかあさんは仏壇にお供えしておまいりをしていました。
ぼくもおまいりをするふりをしてそっと箱をあけてクリームをぺろぺろっとなめました。
一回やるとまたなめたくなって、またおまいりをしました。
ぺろぺろぺろっ。
テレビを見てるとまたおまいりしたくなりました。
ぺろぺろぺろぺろっ。
宿題をやったらまたおまいりしたくなりました。
ぺろぺろぺろぺろぺろっ。
ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ……
夕ごはんのあと、みんなでクリスマスケーキをたべました。
見事なスポンジケーキになっていました。
次の年(年長さん)から、クリスマスケーキは生クリームではなくなり、アイスクリームケーキになりました。
イエスさまの誕生日を祝わないからばちがあったと思いました。
今度からイエスさまの誕生日を祝いますから生クリームにしてくなさい。
といっしょうけんめい仏壇におまいりしました。
そしたらショートケーキになりました。
景気がわるくなりました。
ああ主よ、ぼくはただケーキを食べたかっただけなのです。
お許しください。
神棚に向かって懺悔の祝詞をあげました。
はれろや~ ああーめぇーん
*
クリスマスの想い出はケーキにまつわることばかり。
その反動でケーキの大人買い、大人喰いをして腹ぼてになりました。
喰いあらためます。