老子現代現場訳

【老子 第7章】天長地久~『生きないで生きる』智慧

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天は長えに、地は久し

人為を用いざることが道(タオ)に則るゆえんである。

かえって能く生きる、と老子は教える。

何事も自分を中心に考え、
自分の思い通りになることを望み、
自分の利益のために他人を利用し、我先にと人を押しのけ、
足を引っ張り、生存競争に躍起になっている。

憂き世にあっては、そうしないと死んでしまうという、
強迫観念が心の奥底に潜んでいるからだ。

しかし、我も我もと、本能をむき出しにして闘えば闘うほど、
敵が多くなり、敵に足元をすくわれる結果になったりする。
たとい、勝っても疲労困憊、闘うために休息をとるような、
幸せとは程遠い人生で終わってしまうだろう。

『生を生ずる者は生きず』
[荘子]

『その生命を得る者はこれを失ひ、我がために生命を失ふ者はこれを得べし』
[マタイ傳福音書10:39]

白隠禅師にみる『生きないで生きる』智慧

ある油屋の娘が相手のわからぬ児を産んだので、
父親が問い詰めると、叱られるのが恐ろしくて、苦し紛れに「白隠禅師の児」と答えた。
怒った父親が寺にどなり込んで、その赤子を白隠におしつけた。

白隠は一言の弁解もせず黙ってその赤子を引き取って、毎日もらい乳して歩いて育てた。

雪の深い日など幼い児を懐に入れて、にこにこ慈しみながら歩いている白隠の姿を見ながら、やがて後悔した娘が嘘をついたことを父親に白状した。

父親が恐縮して白隠のところのお詫びに参上すると、「そうかい」といって赤児を返した。
そのため白隠の徳望はいよいよ高まった。

[無能唱元師]

まさに『捨身羅刹(しゃしんらせつ)』『捨身飼虎(しゃしんしこ)』の肚がなければ出来ないことだ。

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【参考文献:白文/書下文/訳】
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天長地久。
天地所以能長且久者。
以其不自生。故能長生。
是以聖人。後其身而身先。外其身而身存。
非以其無私耶。故能成其私。
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天は長えに、地は久し。
天地の能く長えにして且つ久しき所以の者は、
其の自ら生ぜざるを以ての故に能く長えに生ず。
是を以て聖人は、其の身を後にして身先んじ、
其の身を外にして身存う。
其の私無きを以てに非ずや、故に能く其の私を成す。
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一切万物を生成化育する天地大自然の存在は、
まことに悠久永遠である。
天地大自然はなぜ永遠かつ悠久であり得るのか、
それは己れが生成者であるなどと
意識せず無欲無心であるから、
永遠の生成者たり得るのである。
だから天地大自然の理法、
すなわち「道」の体得者である聖人は、
己れを後まわしにして他人を優先させながら、
結局は他人に推されて己が優先し、
己を無視して他人を立てながら、
結局は他人に重んじられて我が身が立つことになる。
それというのも聖人が、己れの小さな自我を否定して、
全く無欲無心となるからではなかろうか。

※朝日選書:老子(福永光司)より引用
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[老子:第七章韜光]
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