持して之を盈たすは、其の已むるに如かず
満足を知ること。
満足を知ることは、争わざるの徳の現れであり、
それが道(タオ)に叶うものである。
一度贅沢な生活に慣れてしまったら、元には戻れない。
月給10万円の者は10万円なりの生活をするが、
月給20万円になったらなったで20万円の生活になる。
今度ぁ会社が左前になって、月給が12万円になったら、
8万円の不足を嘆き悲しみ怨み、この世の地獄と思う。
今まで10万円で生活出来ていたはずなのに、
プラス2万円の満足よりも、8万円の不足に不満を持つ。
盈ちたりた状態を持ち続けようとあくせくしないで、
そんな賢しらは棄てたほうがよい。
欲望の器を大きくし、より大きな欲望を充たすことより、
現状への感謝、満足を知ることが大切である。
カネがあることを鼻にかけ、驕り高ぶれば、必ず禍を招く。
満ちれば欠けるが世のならいである。
頂上を極めればあとは下降の途を辿るしかない。
いつまでも地位や名声や財にしがみついちゃいないで、
春が夏になり夏が秋へと移ろい行くように、
お役目果したら、サっとその場を離れる、ってぇのが粋ってもんだ!
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【参考文献:白文/書下文/訳】
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持而盈之。不如其已。揣而鋭之。不可長保。
金玉滿堂。莫之能守。富貴而驕。自遺其咎。
功遂身退。天之道。
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持して之を盈たすは、其の已むるに如かず。
揣ちて之を鋭くすれば、長く保つ可からず。
金玉、堂に満つるも、之を能く守る莫し。
富貴にして驕れば、自ずから其の咎を遺す。
功遂げ身退くは、天の道なり。
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満水状態を無理につづけようとしてしても愚の骨頂。
鍛えて鋭く尖らした刃物は長保(ながもち)がしない。
金玉財宝を座敷いっぱいに積み上げたとて、
とても守りきれはせぬ。
出世して偉そうな顔をすれば禍のもと。
仕事をやってのければ、
さっさと引退するのが天の道というものだ。
※朝日選書:老子(福永光司)より引用
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[老子:第九章運夷]
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