老子現代現場訳

【老子 第20章】絶學無憂~脱学問のすゝめ

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学を絶てば憂い無し

机上の理論、学問だけがすべてではない。
理論理屈にこだわり過ぎると物事の本質が見えなくなる。

学問などするなとはいわないが、
人々を混乱に貶めるような学問など、棄ててしまえばいい。
そうすれば思い煩いから解放される。

上司に対して「ご苦労様です」というのと
「お疲れ様です」というのは、労いの言葉に変わりはないのに、
「ご苦労様」は目下の人に使う言葉だから、上司に使ってはいけないという。

「様」と「殿」は敬称に変わりはないのに、
目上の人に「殿」を使ってはいけないという。

「貴方」と「貴様」は同じ呼称なのに、
貴様というと相手は驚いて目を丸くする。

いったい、どんな違いがあるというのか。

国語の乱れを嘆く人がいるが、では絶対正しい日本語というものを、
一体どこのドイツが使っているというのか。

正しい敬語とか正しい作法とか、とやかくいうが、
そもそも敬語も作法も知らない人がほとんどなのだから、
そういう人にとって正しい敬語も正しい作法もありゃしない。

いったい、どんな違いがあるというのか。

とはいうものの。

てゆうか。

野蛮人のような者にはやはり学問も必要であり、
それなりの知識、教養もあったほうがよいにきまっている。
世間なみに、人が慎むことは、やはり自分も慎むべきである。

さて、そうなるとどこまで慎んだらよいのか、キリがないから、
世の倣いに従うことも大切だということを踏まえていればいい。

道(タオ)と一体となった者は、
分別ありげに振る舞う世人をよそに、ひっそりとこの世をわたる。

多くの人は何かとりえがあるのに、私はひとりボーっとしていて、
何を考えているのかわからないとらえどころのない田舎者のようだ。

だが、こんなデクノボーな私でも、唯一人と違っているところがある。
それは、母なる道(タオ)に養われて、
それをありがたく、貴いとするところである。

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【参考文献:白文/書下文/訳】
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絶學無憂。
唯之與阿。相去幾何。
善之與惡。相去何若。
人之所畏。不可不畏。
荒兮其未央哉。衆人煕煕。
如享太牢。如春登臺。
我獨泊兮其未兆。如嬰兒之未孩。
*イ纍イ纍兮若無所歸。衆人皆有餘。
而我獨若遺。我愚人之心也哉。沌沌兮。
俗人昭昭。我獨昏昏。
俗人察察。我獨悶悶。
澹兮其若海。*飂兮若無止。
衆人皆有以。而我獨頑以鄙。
我獨異於人而貴食母。
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学を絶てば憂い無し。
唯と阿と、相い去ること幾何ぞ。
善と悪と、相い去ること何若。
人の畏るる所は、畏れざるべからず。
荒として其れ未だ央きざる哉。
衆人は煕煕として、太牢を享くるが如く、春、台に登るが如し。
我れ独り泊として其れ未だ兆さず、嬰児の未だ孩わざるが如し。
*イ纍イ纍として帰する所無きが若し。
衆人は皆な余り有りて我れ独り遺しきが若し。
我れは愚人の心なる哉、沌沌たり。
俗人は昭昭たるも、我れ独り昏昏たり。
俗人は察察たるも、我れ独り悶悶たり。
澹として其れ海の若く、*飂として止まる無きが若し。
衆人は皆な以うる有りて、我れ独り頑にして鄙に似る。
我れ独り人に異なりて食母を貴ぶ。
*ルイ=纍
*リュウ=飂
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学問をやめてしまえば人生に屈託もなし。
ハイと答えるのとアアと返事するのと、
どれほどの違いがあるというのだ。
善と悪とにどのような違いがあるというのだ。
人さまの畏(はば)かることは畏からぬわけにはゆかぬ。
それ以上のあげつらいは、茫漠、ああ際限(きり)がない。

人は浮き浮きとして、
まるで大盤ふるまいを受ける招待客、
春の日に高台に登った物見客のようだ。
だが、わたしだけはひっそりとして心動く気配もなく、
まだ笑うことを知らぬ嬰児(みどりご)のようだ。
しょんぼりとしおたれて宿なし犬もいいところ・
人々はみな裕福なのに、わたしだけは貧乏くさい。
愚か者のの心だよ、わたしの心は。のろのろと間が抜けていて。

世間の人間はハキハキしているのに、
わたしだけはうすぼんやりで、
世間の人間は明快に割り切ってゆくのに、
わたしだけはグズグズとふんぎりがつかない。
ゆらゆらとして海のようにたゆたい、
ヒューッと吹きすぎる風のようにあてどない。
人々はみな有能なのに、
わたしだけは頑(おろ)かで野暮くさい。
わたしだけが変わり者で、
乳母なる”道”をじっと大切にしている。

※朝日選書:老子(福永光司)より引用
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[老子:第二十章異俗]
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