老子現代現場訳

【老子 第35章】執大象~シンプルイズフォーエバー

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大象(たいしょう)を執(と)れば、天下往(ゆ)く

たとえば音楽。
ヒーリングミュージックと冠された音楽は確かに人の心を和ませる。
こともある。

けれど、あまりにも押し付けがましく、これであなたも癒されますよいやされますよいやされますよと繰言をまくしたてられ、BGMにその『癒されます音楽』を四六時中かけまくられたんじゃあそれはただの騒音に過ぎない。

たとえば評判のラーメン屋。
TVで放映されてからというもの店主は湯きりのアクロバチックさにますます磨きがかかりいつも店の前は行列の人だかり。

けれど、いかにおいしいラーメンだといっても毎日ラーメンを食べれば飽きるし、いくらおいしさを追求したってラーメンぎらいの人の評価はいつでも零点。

タラバガニをまるごとトッピングしようが、ツバメの巣をまるごと載っけようが、ラーメンはラーメン。麺とツユのハーモニー。シンプルなのが一番だ。
腕に自信のある職人は『素ラーメン』で勝負する。

あるいは情報販売屋。
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なんていう、誇大な広告をして売っている『だれでも成功しちゃう法則』だの、『がっつり儲けちゃう法』だの、人の野心、欲望をおおいにソソるようなものは、たとい昼メシをのり弁にしようかカップラーメンにしようか迷うような者であっても蠱惑のパワーか魑魅魍魎の呪いかは知らんけれど、見世物小屋の化け物みたさの感覚で大枚をはたいてしまうものなのだ。

おいしいハナシはそうそうあるものではないが、たしかにおいしいハナシは地球が三角になるくらいの確率で存在しているからこそ人々はおいしいハナシには目がないのだ。

きっとそいつを道ばたのブルーシートを敷いた上に並べていたとしても、道ゆく人は足をとめ手にとって妖しい蠱惑なタイトルに妄想をふくらませ、夢をみさせて頂戴ッ!と祈りながらざるにカネを入れるのだろう。

かたや売れない詩人。
ものごとの道理、筋道、真理をぢっと見据えながらつむぎ出すそのコトバは一言で凍えるココロを解かしてしまうほどのパワーをもつがいかんせんそのまことにあっさりとしたなんの味わいもないコトバとして上辺だけでしかとらえられない世間様一般大衆は、そんなカネにもならないコトバアソビなんかしやがって一体なに考えてんだかねこのしとは、と石を投げられる。

すべて過剰なもの、余分なもの、けばけばしいもの過度なものは永続性をもたない。

永続性を持つものは、むしろ単純なもの、淡々としたものなのである。

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【参考文献:白文/書下文/訳】
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執大象。天下往。往而不害。安平大。
楽與餌。過客止。道之出口。淡乎其無味。
視之不足見。聽之不足聞。用之不可。
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大象(たいしょう)を執(と)れば、天下往(ゆ)く。
往きて害あらず、安平太(あんぺいたい)なり。
楽(がく)と餌(じ)とは、過客(かかく)も止(とど)まる。
道の言(げん)に出(い)だすは、淡乎(たんこ)としてそれ味わい無し。
これを視るも見るに足らず。
これを聴くも聞くに足らず。
これを用いて既(つく)すべからず。
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道を守って天下に往けば、
いずくに往くも禍(わざわい)受けず。
身は安楽にして平穏また無事である。
楽のしらべと饗宴とには、
道ゆく客も足をとめるが、
無為の真理はそれを口にしても、
淡々として世俗の味がない。
目をすえて見ても見ることはできず、
耳を傾けて聞いても聞くことはできず、
それを用うれば尽きせぬ働きがある。

※朝日選書:老子(福永光司)より引用
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[老子:第三十五章仁徳]
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