老子現代現場訳

【老子 第75章】民之饑~内なるいのちを大切に

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為政者の生を求める私心を去るべきことを教えている。
[諸橋轍次]

悪い政治とは、民衆が貧困な生活あえいで、もう死んだほうがましだと思うようなやりかた。
あるいは、民衆が政府やそうりだいじんをバカにして、それぞれが勝手なことをする状態をいう。
税を多くとりたて民衆を支配しようとすればかえって治める側がおかしくなる。
これは健康維持、生命を生き永らえるためにあれこれ過剰なサプリを摂取してみたり、あやしげな健康法、民間療法などを試すのに似ている。

興味深いこんな実話がある。
以前、フィンランドの保健当局が、栄養指導や健康管理の効果について科学的な調査をしたことがあったという。

調査の内容はまず、40才から45才までの男性600人を選び、定期診断を行い、ビタミンやカルシウムなど栄養学に基づいて徹底管理をし、毎日適度の運動をしてもらいそれを15年の間続けた。

一方、比較のために同様の条件にあてはまる男性を同じく600人を選んだ。
こちらは、いかなる健康管理も指導もせず、ただ健康状態の調査のみ15年間調べた。

その結果、両者間に恐ろしいほどの違いが現れた。
心臓血管系の病気、高血圧、死亡、自殺、いずれの数も一方が他方よりずっと多かったのである。
それがなんと、健康管理をした方のグループだったというわけである。
医師たちは驚愕し、実験結果の公表を控えた。

[出典:フォーチュンサイエンス]
http://ryuseizan.tsuvasa.com/muno-syogen-jiritsu

この実話を通して何がいいたいかというと、我々は他者依存的になった時、自律組織によって生ずる自然的抵抗力を失ってしまうということ。

この例は、肉体の健康だけにあてはまるものではありません。
つまり、管理が他律的に行われる時、恐るべき自己喪失がそこに生じ、それが自らの心身を守る生気エネルギーを失わせてしまうのです。

よりよく生きるためには却って生きることへの囚われを絶たなければならない。
生きることへの囚われを絶ってこそはじめて人間の生の本来的な安らかさが得られ、人間の社会の恒久的な平和が実現する。

内なるいのちを大切に。

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【参考文献:白文/書下文/訳】
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民之饑。以其上食税之多。是以饑。
民之難治。以其上之有爲。是以難治。
民之輕死。以其求生之厚。是以輕死。
夫唯無以生爲者。是賢於貴生。
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民の饑うるは、其の上、税を食むの多きを以て、是を以て饑う。
民の治め難きは、其の上の為す有るを以て、是を以て治め難きなり。
民の死を軽んずるは、其の上の生を求むることの厚きを以て、是を以て死を軽んず。
夫れ唯生を以て為すこと無き者は、是れ生を貴ぶより賢れり。
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人民が飢えるのは、
支配者がたくさん税金を取り立てるから、
そこで飢えるのだ。
人民が治めにくいのは、
支配者が余計な作為を弄するから、
そこで治めにくいのだ。
人民が死に急ぐのは、
余りにも生きようと求めすぎるから、
そこで死に急ぐのだ。
生きることにとらわれない者こそ、
生命を大事がる者に勝っているのだ。

※朝日選書:老子(福永光司)より引用
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[老子:第七十五章貪損]
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