【無能唱元】唯心円成会伝法講義~会報Enjoh_201708

無能唱元

阿頼耶識に善悪の判断はない!

私は阿頼耶識に事の善悪を判断する能力はないといいました。阿頼耶識にあるのは、インプットされてきた思念が、陰か陽かの区別・判断だけです。そして陰陽どちらのカも助長し、拡大するのです。

たとえば今ここに、非常に身勝手な女性がいたとします。この人は欲張りで嘘つきで、大勢の人に迷惑をかけながらも「地球は自分を中心に回っている」と公言してはばからないような人物です。

その気力と陽気は絶大で、このエネルギーを基として、絶えず自分の欲望を阿頼耶識にインプットしてきた結果、社会的にも経済的にも大きな力を得る事になりました。

しかし数十年の長い間、この女性によって迷惑被害を被ってきた大勢の人々の阿頼耶識は、目には見えない世界でお互いにつながり始めたのです。この女性の言動は、大きな社会問題になり、そしてその力は、一度もこの女性に会ったことのない人々の阿頼耶識までも動かし、この女性を糾弾するための署名運動が、十三万人を超えたのです。

英語に『マイト イズ ライト』という言葉があります。これは、「力は、正義」という意味です。

何にせよ、他人を超える力というものは、素晴らしいものです。そして、このエネルギーに、事の善悪を超えて惹きつけられる人は大勢おります。さほど他人への迷惑などは考慮しないという身勝手さは、自由奔放な力と混同されやすいのですが……。

この意昧で、先の彼女の方に組みしやすいグループも、この世の中に確かに存在します。

次にヒトラーについて少し考えてみたいと思います。

あの、世界で知的であると思われる国民が、なぜたった一人の弁舌士の魔力に引っかかり、何百万人もの人間を殺してしまったのでしょうか?

ぞれは力は正義___この言葉に惹きつけられたからです。
ヒトラーの巧みな言葉は、人々の阿頼耶識に恐怖と怒りと闘争心を吹き込み、それをそこに植え付けたのです。

それは阿頼耶識のつながりを介して、一気に膨大なエネルギーに膨れ上がりました。

一方、この国民の行動を恐れる人々がおります。それは、近隣諸国の民族です。
彼らの間の阿頼耶識のつながりは、ドイツの「力は正義」の考え方は葬り去らねば自分たちが危ないと考え、次第に強まり、その力は増加し、ついにドイツ国民を包囲するほどの圧倒的な勢力となります。

それは、「自分たちの安全」を求める意識です。

最終的に世界的な阿頼耶識の構図として現れた現象は、「力は正義」のエネルギーが「自分たちの安全」のエネルギーの数量に呑み込まれ解体していった、というものでした。

およそ世界の歴史は、この繰り返しです。

歴史という表層現象の裏面には、二分した集団阿頼耶識の葛藤があるのです。

それは、こうも言えます。

「個人の阿頼耶識は独立しており、それは『何でもありの自由性』を持っているが、同時に他人の阿頼耶識とつながっており、彼らの阿頼耶識と同調したり、反発したりしている」ということです。

ですから森羅万象は無記であり、そもそも善悪を持たないのですが、集団的阿頼耶識の主導権の移動に伴い、善悪の基準も移動するわけです。

こうして世界的な道徳も変容して行きます。すなわちここには、禅家でいうところの「不思善悪」(善悪を思うなかれ)が、そのまま説明されているではありませんか。

[出典:唯心円成会発行.会報Enjoh 第392号 2017年08月号]

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